Photodynamic Therapyの頭文字をとってPDTといいます

邦訳は光線力学的療法といって低出力のレーザーと光感受性物質を使って治療する方法です。

PDTのコンセプトはまず腫瘍がある部位に何らかの形で光感受性物質を送りこみそこにその光感受性物質が反応する波長を照射する事で活性酸素が発生させ、それにより腫瘍細胞を死滅させる方法です。

PDT(光線力学療法)の歴史は,1960年メーヨークリニックのリプソン博士によるヘマトポルフィリン誘導体の開発と研究に始まります。その後,米国のDougherty教授と東京医科大学の早田義博教授との共同研究が行なわれ,1980年世界最初の早期肺がん患者のPDTが実施されました。

このPDTで用いられるレーザーは他のレーザーと比べて低出力の物が用いられます。

レーザーと言うと熱で組織を焼くイメージがあるが、PDTに使用する物はレーザーの出力は200mW前後の弱い光なので病巣を焼く事はできません。この装置に求められているのはその波長です。

その波長は630nmです。この波長の光がポルフィリンに照射されるとポルフィリン自体から活性酸素が発生するのです。

現在日本では『フォトフリン』『レザフィリン』という2つの腫瘍親和性光感受性物質ががん治療用として厚生労働省の認可を受け保険適用を受けています。どちらの薬も腫瘍組織には正常組織のおよそ4倍取り込まれます。

実際の治療はまずこれらの腫瘍親和性光感受性物質を静脈注射してから約4時間後にレーザー照射を行います。このように時間を置いてから照射を行う理由は正常組織はがん組織と比べて早い時間に薬が排泄されるているので、この時間差を利用すれば腫瘍細胞にのみに活性酸素が発生して正常細胞は傷つけずに腫瘍細胞のみ死滅させる事ができるからです。

このようにPDT侵襲の少ない癌治療法であり、早期肺癌、早期食道癌、胃癌、早期子宮頸癌、口腔癌、皮ふガンなど比較的アクセスが容易な部位に対して行われていましたが、2012年には悪性脳腫瘍に対するPDTを東京医科大学と東京女子医科大学との共同研究グループが世界にさきがけて開発しました。

今やPDT早期がんのみならず、進行がんにも使用されはじめており、末梢肺がんの経皮的治療、白血病や悪性リンパ腫などの血液疾患にもその適応が拡大されています。良性腫瘍においても,動脈硬化症や血管形成術後の内膜肥厚の抑制、さらに関節リウマチなどの自己免疫疾患、HIV治療や難治性の乾癬、座瘡、円形脱毛症などにも利用されつつあるのです。